『メタルギアソリッド ピースウォーカー』(2010)レビュー ― マザーベースの原点

2010年にPSP用ソフトとして発売された『メタルギアソリッド ピースウォーカー』は、後の『ファントムペイン』で大きく花開くことになる「私設部隊の運営」というアイデアの原点にあたる、シリーズの中でも非常に重要な位置づけを持つ一本です。携帯機用ソフトということもあり見過ごされがちですが、その内容は据え置き機のナンバリング作品にまったく引けを取らない密度を誇ります。この記事では、核心的なネタバレを避けつつ、本作の魅力を紹介していきます。

舞台は1974年、中米コスタリカ

『スネークイーター』の事件から10年後、すでに軍から離れ傭兵として活動していたネイキッド・スネークのもとに、コスタリカでの秘密任務が持ち込まれます。冷戦下の中米を舞台に、正体不明の武装組織や謎の兵器を巡る陰謀に巻き込まれていく中で、スネークは自身の傭兵部隊「ミリタリー・セインズ・フロンティア(MSF)」を結成し、独自の軍事組織として動き出すことになります。この「自分たちの国家に属さない軍隊を作る」という決断こそが、後のビッグ・ボスの生き方を決定づける重要な転換点になっています。

マザーベース運営システムの原点

本作では、フルトン回収装置を使って敵兵を仲間にスカウトし、洋上の拠点「マザーベース」で部隊を育成していくという、後の『ファントムペイン』でおなじみとなるシステムがすでに導入されています。研究開発・戦闘・医療などの部隊に人材を配属し、新兵器や装備を開発していく過程は、携帯機用ソフトとは思えないほどの奥深さを持っており、気づけば何時間も部隊運営に没頭してしまう中毒性を備えています。シリーズのこの中毒性の高いシステムが、実は本作から始まっていたという事実は、シリーズファンなら知っておきたいポイントです。

協力プレイを前提としたミッション設計

本作はソロプレイでも十分楽しめる作りになっていますが、最大4人での協力プレイを前提としたミッション設計も大きな特徴です。仲間と連携して大型ボスに立ち向かう協力ミッションは、当時のPSPユーザーの間で大きな話題を呼びました。一人で黙々と潜入する従来のスタイルとはひと味違う、賑やかで戦略的な協力プレイの楽しさは、本作ならではの魅力のひとつです。

巨大兵器ZEKEを巡る攻防

物語の中心には、新型の二足歩行兵器「メタルギア ZEKE」を巡る争奪戦が据えられています。核兵器を搭載可能な兵器の存在が再び国際情勢を揺るがすという構図は、シリーズおなじみのテーマを踏襲しつつも、本作独自の視点で描かれており、ナンバリング作品に匹敵する見応えのあるストーリー展開を楽しむことができます。終盤に用意された大型ボス戦の数々も、携帯機用ソフトとは思えないスケール感で、プレイヤーを圧倒します。

後のシリーズに繋がる重要なキャラクターたち

本作では、後にビッグ・ボスの右腕として活躍することになるカズヒラ・ミラーや、天才兵器開発者ヒューイ・エメリッヒなど、後のシリーズで重要な役割を担うキャラクターたちが初登場します。彼らがどのような経緯でMSFに加わることになったのかを知ることができるのも、本作ならではの楽しみです。少年兵チコや、謎多き人物パスとのやり取りも物語の重要な軸になっており、本作でしか味わえない濃密な人間ドラマが展開されます。

携帯機とは思えない完成度

PSPというハードの制約がありながら、ステルスアクションとしての基本的な完成度は据え置き機のナンバリング作品と比べても遜色ありません。カモフラージュシステムや索敵AIなど、前作『スネークイーター』から着実に進化した要素も多く、携帯機だからと侮ることのできない作り込みの深さがあります。小島秀夫監督自身も、本作を「ナンバリングに匹敵する位置づけ」と位置づけていたと言われており、その言葉に違わぬ完成度を誇る一本です。当時PSPを持っていなかったファンにも、ぜひ現在の環境で追体験してみてほしいと思います。

音楽と無線でのやり取りの魅力

本作でも、任務の合間に交わされる無線越しのやり取りは健在で、シリアスな物語の合間に人間味あふれる会話が挟まる、シリーズならではの緩急がしっかりと味わえます。音楽面でも、後の『ファントムペイン』に受け継がれることになる劇伴の方向性がすでに感じられ、シリーズを通してプレイするとその繋がりに気づかされる場面が多くあります。携帯機用ソフトとは思えないほどの作り込みの丁寧さは、随所に感じ取ることができます。

個人的な感想

本作をプレイして最も印象に残ったのは、後の『ファントムペイン』で自分が夢中になったマザーベース運営の原型が、すでにこの携帯機用ソフトの時点でここまで作り込まれていたという事実でした。「ナンバリングではないから」と敬遠していると、シリーズを語る上で欠かせない重要なピースを見逃してしまうことになります。ビッグ・ボスという人物の生き方の転換点を描いた物語としても、本作は非常に読み応えがあり、シリーズファンには絶対に見逃してほしくない一本だと感じています。携帯機用ソフトという先入観を一度捨てて向き合うと、その完成度の高さに驚かされるはずです。

タッグ攻略が生む独自の戦略性

協力プレイでは、仲間と役割を分担しながら大型ボスの弱点を突いていく戦略性が求められます。囮になって敵の注意を引く役、遠距離から援護する役など、パーティ内での連携次第で攻略の難易度が大きく変わってくるため、何度も挑みながら最適な作戦を練り上げていく過程そのものが楽しいゲームデザインになっています。一人で黙々と攻略するソロプレイとはまったく異なる魅力がここにはあり、当時のPSPユーザー同士のすれちがい通信を活用した遊び方も含めて、独自のコミュニティを生み出す土壌にもなっていました。

よくある質問

今から遊ぶにはどうすればいい?

PSP用ソフトのため入手はやや難しくなっていますが、PS3・Xbox 360用の移植版『メタルギアソリッド HDエディション』に収録されているため、そちらであれば比較的入手しやすくなっています。中古市場でも比較的見つけやすいタイトルです。

『ファントムペイン』を先に遊んでいても楽しめる?

もちろん楽しめます。むしろ『ファントムペイン』のマザーベース運営がどのように生まれたのかという原点を知ることができるので、先に『ファントムペイン』を遊んだ人ほど新鮮な発見が多いはずです。答え合わせのような感覚で遊べるのも本作ならではの楽しみ方です。

まとめ

『メタルギアソリッド ピースウォーカー』は、携帯機用ソフトという枠を超えた濃密な物語と、後のシリーズに大きな影響を与えるマザーベース運営システムの原点を持つ、シリーズを語る上で欠かせない重要な一本です。ビッグ・ボスという人物の生き方の転換点を描いたドラマ性の高さも見逃せません。協力プレイならではの賑やかな楽しさも含めて、多方面から楽しめる懐の深い一本です。ナンバリング作品ではないからと敬遠せず、ぜひ一度触れてみてほしい隠れた名作です。シリーズ全体のピースを埋めるという意味でも、避けて通ることのできない一本だと言えます。

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